アトピー性皮膚炎に対する外用PDE4阻害薬が登場

2021年11月10日

2021年9月27日、アトピー性皮膚炎(AD)治療薬のジファミラスト(商品名モイゼルト軟膏0.3%、同1%)の製造販売が承認されました。

用法用量は「成人には1%製剤(小児には0.3%製剤)を1日2回、適量を患部に塗布、小児には症状に応じて1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができる」となっています。

手のかゆみ

ADは、増悪と寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患であり、患者の多くはアトピー素因を有するものと定義されていて、中等度から重症のADは、広範囲な発疹を特徴となっていて、持続する難治性の痒み、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮と毛細血管出血を伴うことがあり、患者にとっては、痒みが最も大きな負担となり、体力を消耗させることもあります。

ADの治療方法は、病態に応じて薬物療法、皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、悪化因子の検索と対策が基本となっており、これらを個々の患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切に組み合わせており、中でも、ADの薬物治療としては抗炎症性の外用ステロイドとタクロリムス水和物(プロトピック他)が有効性および安全性において多くの臨床研究で検討されている中心的治療薬に位置付けられています。

ADの治療目標は、症状が認められない、あるいは症状があっても軽微であり、かつ日常生活に支障がない寛解状態への導入およびその維持なのですが、既存の外用ステロイドは皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所副作用により、適応部位(顔など)や長期連用に関する問題も生じていて、この問題に関しては、2020年6月よりヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有した非ステロイド外用薬のデルゴシチニブ(コレクチム)が臨床使用され、改善されるようになりました。

ジファミラストは、既存のADの外用薬と作用機序が異なり、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の酵素活性を選択的に阻害して抗炎症作用を示す、日本初となる外用のPDE4阻害薬(油脂性軟膏剤)であり、ADの末梢血白血球ではPDE4様活性が亢進し、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)濃度が低下していることが認められており、このPDE4は多くの免疫細胞に存在し、cAMPを特異的に分解する作用を有しています。

ジファミラストは、PDE4阻害作用により、炎症細胞の細胞内cAMP濃度を高め種々のサイトカインおよびケモカインの産生を制御することにより、ADの皮膚炎症を抑制、既存のPDE4阻害薬としては、2017年3月より経口薬のアプレミラスト(オテズラ)が乾癬やベーチェット病による口腔潰瘍の適応で臨床使用されています。

軽症から中等症のAD成人および小児患者を対象とした国内第III相試験および国内長期投与試験にて、本薬の有効性および安全性が確認されているのですが、副作用として、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、搔痒症(各0.5%以上)などが報告されているので十分注意する必要はあります。

薬剤使用に際しての注意事項

  • 塗布量は、皮疹面積0.1m2あたり1gを目安にすること
  • 1%製剤で治療開始4週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止すること
  • 小児に1%製剤を使用し、症状が改善した場合は、0.3%製剤への変更を検討すること
  • 妊娠可能な女性には、本薬投与中および投与後一定期間は適切な避妊を行うように指導すること


同じカテゴリー(薬剤)の記事画像
救急集中治療医がマンガで解説
MONITARO-Lite
有望薬「アビガン」「レムデシビル」
同じカテゴリー(薬剤)の記事
 救急集中治療医がマンガで解説 (2023-02-15 10:57)
 MONITARO-Lite (2021-03-17 13:35)
 有望薬「アビガン」「レムデシビル」 (2020-02-27 15:01)

Posted by 寺島寿樹  at 09:44 │Comments(0)薬剤

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。